シルクスクリーンは1930年代のアメリカで不況対策事業WPA(公共事業促進局)の連邦美術計画の一環でアーティストが参加してシルクスクリーン印刷によるアートプリントを開発して展覧会を開催した頃からアーティスト達に愛されている表現方法です
1938年ニューヨーク現代美術画廊で最初にシルクスクリーンで展覧会をしたアーティストはガン・マッコイ
ガン・マッコイの展覧会を皮切りに、その後多数のアーティストが展覧会を行うようになりました。アートとしてのシルクスクリーンが確立されたのはフィラデルフィア美術館のカール・ツィグロッサー館長がアートのシルクスクリーンを「セリグラフィー」と命名した時でしょう。その後にはシルクスクリーン印刷技術が進歩して、写真による製版が可能になり、いよいよ1960年頃にはアメリカでポップアートが出現しました。シルクスクリーンの豊かな表現技術は、このアートスタイルに使用されて人気が出ました。またグラフィックデザインの世界ではスクリーン印刷を使ったポスターが制作されるようになり、アーティストのアート表現だけでなく商業デザインの分野でも多く使われはじめました
シルクスクリーンはアート以外に実用的製品の領域にも進化した
有史以前からスペイン、フランスピレネ-地方を中心に用いられていた古い技法のセリグラフ技法は、1907年サミュエル・シモンが特許権を得てからイギリス、アメリカに広まり、スクリーン印刷の持っている技術的側面での合理化、工業化、マスプロ化が行われるようになりました。インクが転写ではなく、透過によって固定されるという特性から、従来の印刷が困難であった材質、形態への印刷が可能になり、1920年代にはガラス用セリグラフの印刷が行われるようになります。
1940年代には、第2次世界大戦の戦場でプリント回線による無線通話機にも使われます。アメリカは、軍需産業分野においてそれまで大きく、重かった無線通信機を小型にするために、プリント回路の研究がすすめられ、限定された小さなスペースに電気回路を配線するためのコンパクトな電子装置が求められていました。数多くの製品を合理的に生産するためとても有効だったのです。プリント回線は、より高精度なスクリーン印刷技術が求められました。そこで、従来使用されていた膠やゼラチンに変わり、ポリビニールアルコールやアセテートなどを使った乳剤が開発されました。電子回路の集積化が進むとともに、工業分野ではスクリーン印刷の技術が発展し、その後さらに極度に高い精度の電子回路を作る写真製版セリグラフ技術、現在では電荷色粒子を磁場の引力で印刷するゼログラフ印刷が利用されています。シルクスクリーンは工業製品の高精度化とともに開発されてきました。今日、ロケットから家電、コンピュータに至るまで、この技術が応用されています。
スクリーン印刷には、紙、プラスチック、金属、布、ガラス、皮など印刷体の各種素材に対応する多くのインクがあります。空気や水以外、フィルム状のものから複雑な成型品まで、厚さ、大きさ、平面、曲面、凸凹などを問わず、ほとんどの形状のものに対応しています。たとえば、道路標識、遊園地のサインボードや案内標識、ポスター、店舗の看板、バナー、垂れ幕、旗、Tシャツ、プレミアム商品、カップやソーサーの絵、ビール瓶、清涼飲料水の容器、牛乳瓶、化粧品、飛行機、自動車の計器、温度計の目盛り、カーテン、壁紙、新建材、CD(-ROM)の板面もシルクスクリーンで刷られており、スクリーン印刷は多様に展開していてます。
セリグラフ
セリグラフとは、細かい織り目をもつ素材、絹、ナイロン、テトロンを木や金属の枠に張り、インクか絵具を 版の下に浸透させ直接印刷する技法です。この技法は、難しいテクニックや複雑な材質を必要とせず、どんな型紙からでも多色多様に製作できます。別名シルクスクリ-ンともいいます。セリグラフ (Serigraph )という語源は、ラテン語のSeri=「シルク(絹)」、ギリシャ語のGrapos=「描く」より 由来しており、有史以前からスペイン、フランスピレネ-地方を中心に用いられていた古い技法で すが、 今世紀に入り様々な技術革新により急速に普及してきた技法です。1907年、イギリス、マン チェスタ- のサニュエル・シモンがシルクスクリ-ン印刷の特許を取得し、1914年にはアメリカ、ジョン・ ピルスワ- スが多色刷に成功しました。その後一つの型紙からスピ-ディ-で効果的に印刷できるこの技法は、多く の芸術家や職人に用いられています。
シルクスクリーン
版の孔(穴)を通して、インクを下に押し出し刷り取る方法。
金属や木製の枠に張られたシルク(絹、テトロン、ナイロンなど)の細かい布目に、色分けした部分ごとに目留めをして、インクが通る部分と通らない部分を作って版にする。この版の上にインクをのせ、インクを伸ばしてしごくようにして、版の下に置いた紙に刷る。
色ごとにインクを何層にも重ねるので、きめの細かさと奥行きが生まれる。インクののりにムラがなく発色が良い。
シルク印刷は版とスキージとインキがあれば、とくに機械等がなくても印刷が出来ます。
1つの色に1枚の版が必要になります、例えば、10色ですと10枚の版が必要となります。
出典元:新しいシルクスクリーン入門(誠文堂新光社)